11.人身の自由 11−1 基本原則     1.奴隷的拘束からの自由   第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服さ       せられない。   →私的自治を考慮する必要がなく、私人間にも直接効力を有する。 2.適正手続の保障   第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ又はその他の刑罰を科せられない。    (1)保障の内容   *31条は、手続の法定のみならず手続の内容の適正や実体の法定をも要求しているか。B+  (2)実質的内容   →告知と聴聞…公権力が国民に刑罰その他の不利益を課す場合には、当事者にあらかじめその内容を告知し、当事者に   弁解と防御の機会を与えなければならない。 3.行政手続等への準用  *31条は、行政手続に適用されるか。明文上、刑事手続に関する規定なので問題となる。B+   →31条適用説:行政手続にも適用されるが、円滑・迅速な行政運営の観点から、行政の性質に応じた修正は許される。   r.現代国家においては国民生活への行政的介入が適正に行なわれることが人権保障に重要である。    31条準用説(通説):準用される。r.適用説のような修正を認めると、それが刑事手続に跳ね返り、肝心の刑事   手続における保障を弱めることになる。    13条説:31条は刑事手続に関するものであり、行政手続の適正性の根拠は13条に求めるべきである。 11−2 被疑者の権利     1.不法な身体拘束からの自由  (1)不当な逮捕からの自由    第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪        を明示する令状によらなければ、逮捕されない。    令状主義    *緊急逮捕の合憲性。D →緊急逮捕も令状による逮捕の1つであるor現行犯逮捕の1つであるor公共の福祉による制限である。  (2)抑留・拘禁からの自由    第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁され        ない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁      護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。  抑留・拘禁の理由の告知を受ける権利   弁護人を依頼する権利  拘禁についてはその正当な理由を公開法廷で示すよう要求する権利   *抑留とは→身体拘束のうち、一時的なもの。 逮捕・留置   *拘禁とは→身体拘束のうち、より継続的なもの。 勾留・鑑定留置 2.住居等の不可侵   第35条  何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場       合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、        侵されない。    捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。    住居の不可侵(令状主義) 11−3 被告人の権利     1.拷問・残虐刑の禁止   第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。   *残虐な刑罰とは→不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰(判例)。 2.公平な裁判所の迅速な公開裁判   第37条  すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。 *迅速な裁判の要請に違反する長期裁判から、いかにして被告人を救済すべきか。B   →通判)37条によって直接救済する。 3.証人審問権・喚問権   第37条  刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続        により証人を求める権利を有する。   証人審問権…直接審理の原則  証人喚問権    4.弁護人依頼権   第37条  刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依       頼することができないときは、国でこれを附する。     *被疑者に国選弁護人の権利が保障されるか。B    →通判)保障されていない。r.37条3項は「被告人」という言葉を用いている。 5.自白強要からの自由  (1)自己負罪の拒否    第38条  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。    自己負罪拒否特権→黙秘権   *38条1項が行政手続にも準用されるか。    →判例)原則として準用されるが、刑事責任を追求するための資料の取得収集に直接結びつく作用に限定する。   *麻薬及び向精神薬取締法は、麻薬を取り扱う者に対し、取り扱った麻薬の品名、数量などを帳簿に記入することを義    務づけ、その違反を処罰する旨規定しているが、このような義務づけは、不利益な供述の強制として38条1項に違    反しないか。B    →通判)違反しない。r.麻薬の取締りに関しては、その行政目的の重要性から、取締りに必要な限度での記載につ       いては、不利益供述拒否の権利の放棄という考え方を認めてよい。   (2)自白    第38条  強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とする      ことができない。      第38条  何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。     自白排除の法則…任意性のない自白の証拠能力を否定する。   補強証拠の法則…任意性のある自白でも、これを補強する証拠が別にない限り、有罪の証拠とすることができない。 6.刑罰不遡及と二重の危険の禁止   第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、   同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。 刑罰不遡及…事後法の禁止。罪刑法定主義の現れ。 二重の危険の禁止/一事不再理効 *39条前段後半と後段は、二重の危険の発想と一事不再理の発想を混在させており、いかに解すべきか。C    一事不再理効…同一の事件は一度審理し終えたならば再度審理することはないという原則。   {二重の危険…被告人の権利と公益のバランスとして、国家に一度だけ訴追を認め、再度同じ負担を負わされ       ることのない権利を被告人に保障するもの。  →団藤)前段後半は「一事不再理」、後段は「二重処罰の禁止」を定めたものである。   平野)両者あいまってアメリカ法流の「二重の危険の禁止」を定めたものである。